2013年9月13日金曜日

Amnesia -A Machine for Pigs- レビュー


全世界のゲームファンを恐怖のどん底に陥れた
名作ホラー・ゲームの続編

 Amnesia:The Dark Descent(以下TDD)というタイトルをご存知だろうか。
インディーズゲーム界をまたたく間に席巻し、ゲームそのものの人気もさながら、Youtubeでの実況動画など、海外のインディーズ・ホラーゲームブームの立役者と言っても過言ではないビッグタイトルである。
 本作はそのTDDの続編となるタイトルで、前作にダダハマりした筆者は一も二もなく飛びついた次第である。

 本記事では、多大なプレッシャーの中生み出された続編がいかほどのものか書いていこうと思う。


受け継がれた独特のシステムと、調整されたゲーム・プレー&新要素

 Amnesiaと言えば、今まで有ったようで無かった一人称視点・戦闘無しのホラー・アドベンチャーゲームだ。
主人公は敵に対しての対抗手段を持たない。すなわち、銃もなければ武器もなく、カメラで撮影して敵にダメージを与えるなんていう力はもっての他だ。
脅威が現れれば息を切らして逃げ惑うしかなく、味方も居ない中で謎を解き明かしていかなければならない。

 その潔いまでにプレイヤーに恐怖を感じさせるシステムにもいくつかの変更点がある。

・体力ゲージは廃止。戦争FPSゲームでお馴染みの自動回復システムに。

 前作TDDでは体力ゲージがあり、追跡者の攻撃を受ければ必要に応じて回復する必要があったのだが、これは廃止に。
プレイヤーの不安を煽るには有効だったが、前作TDDにおいては結局体力を回復せずとも死亡すると直前からやり直せた上に、回復アイテムがあまりがちだった為、「体力とか意味ないじゃん!」という機能不全な感はあった。

・前作まであったSanity(正気度)ゲージも廃止

 前作TDDには、プレイヤーの精神の均衡を表すSanity(正気度)ゲージがあった。
体力の他に自分の精神衛生にも気をつかう必要があった訳だ。
モンスターを正視したり、暗闇に長時間要ると徐々に精神の均衡を失い、幻覚が起きたり、足元がもつれてころんだり、モンスターに発見されやすくなったりするデメリットがあった。
今作ではこれも廃止されており、プレイのテンポが良くなった。

・光源はリソースを消費せず、無限に使用可能に

 シリーズ通して、ほぼ暗闇ばかりの中を駆け抜けるこのゲームにおいて光源は超重要である。
前作のオイル式ランタンとうってかわって、今作では電気式の懐中電灯のようなランタンを用いる事になる。
体力ゲージと同様、ランタンもオイルが余りがちだったりと不安を煽る要素でありながら枯渇の心配がないという状態だった為、スポイルされて良かったとは思う。
新しい電気式ランタンも、敵の存在を知らせる様にカチカチと嫌な音を立てて瞬いたり、消えて欲しくない所で消えたりと更なる恐怖の演出に一役買っている。


・野外シチュエーションという新たな試み

 Amnesiaと言えば、屋敷や地下など、閉鎖された空間で逃げ惑う恐怖が大きくフィーチャーされていたのだが、今作では外に出るシチュエーションもある。
もちろんすぐに屋内へと案内されてしまうのだが、外に出て恐怖が薄れるかと思いきやその逆で、不思議と孤独感が増されて、また町並みが不気味に見えて効果的な演出となっていた。


・おなじみのThe Gatherersも新しい敵に

 もはやマスコットキャラ的な扱いを受けている前作の敵、The Gatherers(余談だが主に露出しているのはServant Gruntsという種類の方で、もう一種類見た目の違う強化版が居る)は今作ではお役御免となり、新しい敵に成り代わっている。
インパクトの強い彼らだったが、今作では違う方向にショッキングな見た目となっている。
前作の様な得体の知れない奥深い恐怖はなりを潜め、直接的・物質的な恐ろしさと、ある種の哀れみを感じさせる。

・インベントリ廃止。アイテムの回収は文章のみとなり、キーアイテムもクリックで掴んで持ち運ぶ方式に

 前作TDDにおいては、アドベンチャーゲームではお馴染みの、クリックでキーアイテムを持ち物として回収し後で使うシステムがあったがそれも廃止されている。
これによりアイテム回収のわずらわしさは減ったが、オイルや回復アイテムを回収出来た時の安心感と恐怖の対比などもスポイルされており一長一短。
ただ、キーアイテムをクリックして持ち運ばなければいけないシステムは功を奏しており、迫る敵に焦りながらアイテムを抱えて逃げ惑ったり、はたまたうっかり重要なアイテムを敵の居るエリアに忘れて来た、なんていう事もあったりと演出としては大成功している。


総括・より遊びやすくなり、ゲームとして洗練された新作!しかし怖さは…。

 今作はとにかく前作に比べてテンポ良く、楽しく、お化け屋敷の様に楽しめる仕上がりになっている。
アイテム回収の手間は省かれ、モンスターとの遭遇はお膳立てされたステルスゲームの様だし、ホラー映画の様に演出が凝っている。
しかし、その半面で前作にあったクトゥルー的な、全く得体の知れない恐怖や、暗闇の中迷いながら逃げ惑う恐ろしさ、オイルや回復アイテムが枯渇するのではないかという不安感はかなりスポイルされてしまっている。
 正直に言って、モンスターは前作の方が遥かに恐ろしく、今回のモンスターの造詣は慣れて来ると可愛くさえ感じてしまう程だ。

 ただ、まったく恐ろしさがないかという訳ではなくて、よく練りこまれたスクリプトは何度も筆者に叫び声をあげさせたし、オイルや体力の管理に煩わされる事なく先へ進む事に集中出来るのは利点でもある。
 前作があまりにも恐すぎたのだ。

 一長一短なシステムの変更点や優しくなったホラー要素を踏まえてもAmnesia -A Machine for Pigs-はそんじょそこらのホラーゲームよりよく出来ており、前作のファンには「前作よりは怖くないよ」と注意した上で。カジュアルプレイヤーやホラーゲームに飢えた人には胸を張って薦められるタイトルだ。

今回のレビューより、評価にSSからEまでの7段階評価を使おうと思う。

評価:A

買って損なし!ただし、前作のファンは少しガッカリするかも…。

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